赤潮の季節に考えている事

今回の記事はこちらの著書を参考にしました。
(愛読しすぎて、劣化とコーヒー染みできったねえです。カバーもどっか行きました)。

まずは

酸素を含め、気体の物質が水に溶け込む際は、水温が低いほど多く溶け込み、水温が高いほど少量しか溶け込みません。赤潮被害(後述しますが、厳密には赤潮による酸欠被害)が真夏の風物詩となっているのはこのためです。

水温の制約と溶存酸素の制約

冬であれば溶存酸素は基本的にどの場所でも豊富なので、「ここは酸欠で入れない」といったような制約が生まれにくいと思われます。一方川の場合、非常に冷たい水が上流から流れ込んで来ますので、変温動物であるチヌとしてはどの塩梅で「海の暖かい水と川の冷たい水が混じり合う場所」の中に位置取るかを決めているイメージを私は持っています。

しかし夏の場合、溶存酸素に乏しい領域であったり、急に酸素が無くなって後々死んでしまうゾーンなんかがあるため、どちらかといえば溶存酸素によって居場所の制約を受けているイメージを持っています。一方で高水温故に体が良く動くのか、冬であれば外敵の襲撃を受けた際に逃げ遅れてしまいそうなドシャローや超上流域にも入って行きやすいと思われます(高水温期は顕著にドシャローの見えチヌが増えますよね)。

下水と塩素

東京湾流入河川の中でも、特に栄えている場所を流れて来る川では、必ずと言って良いほど夏に悩まされる問題です。台風や夕立なんかで一気に大量の雨が降ると、下水処理場は汚水の浄化が間に合わなくなり、下水に塩素を混ぜ込んで川に流すという形で処理を間に合わせます。その際、汽水域の魚が大量に死んだりします。

基本的には、無脊椎動物の方が塩素に弱く、脊椎動物の方がある程度しのぐ力がある印象なのですが、大雨の場合、ポイントの生物という生物がほぼほぼ死んでしまうような状況を目にします。

↑エビ類なんかは顕著に弱いので、現在の水質のある程度の指標として結構役立ちます。

また、水中のあらゆる有機物は、腐る(=微生物によって分解される)際に酸素を消費します。下水は大量の有機物を含んでいるが故に、分解が進む際に大量の酸素を消費します。これが冬季であれば、低水温故に酸素が水中に豊富に溶け込んでいるほか、微生物も低活性なのでほぼ問題は露呈しないのですが、5~9月あたりにはこれらが魚類を殺したり遠ざけてしまうことがあります。他にも硫化水素や急性アンモニア中毒等の問題もあるかもしれませんが、大きな要因としてはほぼほぼこれらなんじゃないかなと思っています。

強い夕立が降った翌日なんかに、水面がボラの死骸まみれになっていたら、即これを疑いますね。

雨はチニングにおいて良い影響をもたらす、といったような言説が多いですが、東京湾の主要部ではこれによって逆効果になる場合が多々あります。地方の方と東京湾の方では、降雨についての印象が真逆になるかもしれませんね。

赤潮を起こす植物プランクトンについて

本題の赤潮の話です。赤潮を引き起こす種は、渦鞭毛藻(うずべんもうそう)類、珪藻類、ラフィド藻類、などなど…多岐に渡ります。しかし、大規模に有害な赤潮を発生させる種の割合としては、多くの場合で渦鞭毛藻類です。

※渦鞭毛藻類が他の藻類と何が違うのかに関しては、正直な所釣りとほとんど関係ないので割愛します。

そもそもなぜ魚に有害なのか

理由は大きく分けて二つあり、ほとんど全ての場合で「著しい酸欠の誘発」によるものです。活性酸素を発生させ、魚のエラを傷つけて大量死させるものであったり、ダイレクトに毒素を作り出して周囲の生物を殺傷するものもいますが、汽水域のチニングポイントにおける悪影響においては、前者の酸欠についてがほぼ全ての要因と考えて間違いないでしょう。

酸欠を引き起こすメカニズム

植物プランクトンは、分裂の際に酸素を消費します。また、光合成と呼吸を同時並行で行っている日中は、トータルで酸素を生み出す量の方が多いですが、夜間は普通の動物と同じように呼吸して酸素を消費します。また、死んだ植物プランクトンの死骸は、バクテリアに分解される際に酸素を消費します。おまけに、赤潮によって死亡した生物の死骸も、腐る際に酸素を消費します。一にも二にも、大量発生してしまうと周囲の水域からどんどん酸素を奪い取ります。しかし藻類自体は、シストという耐久モード(サナギみたいな感じです)になって、環境が好転するまで死んだように眠って耐え忍ぶ事が出来るので、周囲の魚や少量の同族が死のうが「知ったことか」といった感じで、自種の大繁栄を優先するようなイメージですね。チヌやシーバスのような汽水域のルアーフィッシングのターゲットは、その巻き添えを喰らっていると考えることが出来ます。

植物プランクトンの日周鉛直移動

この話を釣りコミュニティで見たことが無いのですが、特に汽水域の釣りでは超々大事な事だと思っています。赤潮を起こすプランクトンの中には、日周鉛直移動(にっしゅうえんちょくいどう)と呼ばれる大規模な上下方向の移動を行う種がいます。昼は光量の多い水面近くに浮上し、夜には沈んでボトム付近に多い肥料分を吸収するような行為です。そしてこの移動幅が(プランクトンのくせに)かなりアクティブで、20m近い移動を行う種も知られています。という事は、日中に目前の水面が真っ赤っ赤でも、ボトム付近は割と無事な可能性があります。反対に、ナイトゲームで一見大丈夫に見える水色でも、下層は死の水になっている事もあります。現場で検証する術はほぼ無いですが、赤潮を引き起こすプランクトンはこのような移動をする傾向が強いと考えると、ポイントを絞る精度が上がる気がしますね。

※透明のビンに濃い赤潮ウォーターを入れておくと、日中は水面付近に集まって表面だけが茶色い状態、夜間はビンの底付近が茶色い状態と、濃淡が発生して移動を間近に見る事が出来るらしいです。

上げ潮下げ潮

プランクトンの定義は、「水流に逆らって泳ぐ能力を持っていない浮遊性の生物」です。遊泳力が無いor微弱な場合は、全てプランクトンです。ミクロな生き物がプランクトン、という定義ではありません。そのため、ミズクラゲのようなサイズ感の生物もプランクトンに分類されます。
赤潮ゾーンは勿論、上げ潮・下げ潮で流されて河口域を上下します。一方で、先述の通り浮く・沈むを自発的に行う能力はあるので、これは水平方向の移動とはまた違った仕組みですね。

百害あって一利なしな気がします

チニングをする上でとにかく困る、という事については間違いないのですが、個人的には、上流域の釣りに強気に踏み込んで継続する事が出来るので、ポイントを決める上で思考がシンプルにまとまる事も多いです。

上流と下流の個体について

サイトチニングに幾年もハマッていても、真夏はビックリするぐらい上流にチヌが上がってくることにいつまで経っても驚かされます。一方で、下流域の個体群を見ると、魚のタイプが明確に違う事に気付きます。タイプが違うといいますか、タイプごとの存在比が全然違うというイメージです。

基本的には、チヌは真水の領域までグイグイ入って来るとは言え、分類上は海水魚です。存在する魚影の濃さだけ見た場合、下流が最も濃く、上流に向かうにつれ薄くなっていくグラデーションを成すのが基本パターンです。もちろんこれに伴わないイレギュラーな事も数多くありますが、総合的に考えた場合、上流域から河口域のチヌの濃淡を見渡せば、概ねこの傾向に則った分布をしていると考えています。そして厳冬期では、その色の幅が縮まり、下流域に降りて来るイメージです。しかし、真夏にはこの傾向に従わないグループがいると感じています。

何回もしつこいかも知れないですが…

何度も同じことを発信しているのですが、クロダイは性転換を行う魚で、小さい頃は全員オスとして生まれ、成長にしたがってほとんどの個体がメスに性転換していきます。これは、小さいうちは生成にさほどカロリーの要らない精子を扱い、大きくなるとカロリーを消費する産卵行為に尽力する、という生存戦略だといわれています。

また、魚は成長に伴って彼らなりの学習が進み、釣りにくくなる(クロダイに限らずほとんどの海水魚で、自然界である程度経験を積んだ魚を水槽に入れると警戒心があって餌付きにくい一方、幼い魚はかなり迂闊で、水槽内でもコロッと餌付きます)傾向がありますが、性転換後、成熟が進んだクロダイはかなり悪食で、産卵で失うカロリーを埋め合わせるためなのか、食への執着が強く、サイトチニングの上では釣りやすいです。その上で…

超アクティブ&命知らず群

夏は、いうなればこんな感じのグループがいると私は考えています。これらの個体は、チニングポイントといってイメージするような場所からかなり離れた上流にまで進出してきます。そしてこれらの個体に言える事なのですが、やる気がある個体がかなり多いです。川の下流に酷い赤潮が押し寄せ、「無事な水」が中~上流にしか残っていないような「川の中に封鎖された状態」でも、平気で上流域の背鰭が出そうな超浅瀬で餌を漁っていたりします。おそらくほとんどのクロダイはこうした絶望的な封鎖状況になる前にその領域から脱している気がするのですが、一部命知らずなグループが上まで登ってきます。

外見の傾向として、やはりガタイが良くてイカつい雌で殆ど構成されており、食欲に突き動かされた結果生み出される何か(他のクロダイが手を付けていない上流の餌を求めに行く場合に効果が大きいのか、高水温で代謝が上がって体が良く動き、獲物の捕捉効率が上がるのか、真相はよくわかりませんが…)な気がします。


こうした個体が特に夏には釣れ易いために、上流に向かって魚影が薄くなる基本の魚影グラデーションが崩壊し、我々からすると「居場所の法則や傾向が読めない」といったことになります。もっと具体的な例で言えば、
下流:いるけど少ない
中流:いない
上流:いない(いや~この川ダメだな)
超上流:結構いる

といったような、一見すると意味不明な生息パターンが起きがちです。

なので

①下流域の「母数の多さ」を活かし、散るのを気にせず広範囲サーチ系で尾数を伸ばす
のか、
②上流域の個体の「釣り易さ」を活かし、一匹一匹の難易度を下げて尾数を伸ばす

のかのチョイスで、結果の明暗が分かれると私は考えています。そしてどちらを選ぶかにより、釣りの方向性が180度変わると言っても過言でもありません。

私の中では、②は特に夏に取りやすい方針という位置づけです。

がしかし、

①のプランを夏に取る場合、赤潮と下水という要素がそれを邪魔をしてくるので、思い通りに行きません(笑)

個人的には、夏は上流の釣りに頼りがち

以前の記事で、バスとチヌを同所で釣りあげました笑、といったような例を見せたのですが、確か8月だったと思います(うろ覚えですが、夏には間違いありません)。

これも、赤潮なんぞほとんど関与が無いような場所で釣っています。

こんな感じで

夏に避けられない
・赤潮
・下水
の問題と、夏によく現れる
・中~上流のイレギュラーグループ

について書いてみました。
以上です。最後までお読みいただきありがとうございます。

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