チニングと超正常刺激

生態・形態

この記事の前置きに当たる記事はこちらです↓

チニングに限らず、非常に実績の高いワームの造形が、本物のベイトにさほど似ていない事は多々ありますよね。みなさんも感じているであろう共通認識かと思います。ワームに限らずプラグでも同様の事が言えると思います。

私は、これをどうやって矛盾なく説明すればいいのか、長年悩んできました。よくよく考えれば不思議じゃないですか?

大脳先行の考え方について

人間は、他の生物の比にならないほど大脳が発達しています。それ故に、他の動物よりも遥かに高次元な解釈をする事が出来ます。私たちは人間なので忘れてしまいがちですが、普段の何気ない思考も、他の生物にとってはレベルが高すぎて出来ない事が多々あります。

そのため、ルアーフィッシングを楽しむ上で、何かしらの出来事について魚の気持ちになって考えたりする時に、人間レベルの高次元過ぎる解釈を魚に押し付けてしまいがちです。そんな具合の『大脳先行の考え方』については、ルアーのカラーについての回で詳細に語っています↓。

ルアーと本物のベイトを見比べたときに、似ているかどうかを判断する際、人間は「似ている」「似ていない」といったことを色々な要素から多角的に判断出来ますが、魚であればその解釈はより解像度が低く、粗いものになります。

プラグで考えた場合…

プラグでイメージした方がわかりやすいシチュエーションがあるので、プラグに例えてみます。例えば、カタクチイワシが接岸している状況で、外洋性のチヌがカタクチイワシに着いており、そこでカタクチイワシに似ているミノーを投げたとします。

その際、「似ている」という印象を詳細に紐解いた場合、

①サイズ感が似ている

②カラーが似ている

③水押しが似ている

④移動スピードが似ている

の4つに分けられるとします(レンジキープ等、他にも要素を挙げればキリがありませんが、今回はあまり考えません…)。

これらの要素を瞬時に処理して多角的な判断をする場合、極めて高次元な処理能力が脳みそに求められます。

このような状況であれば、我々は足元で少しルアーを少し泳がせただけで「うわ、似ている!釣れそう!」といった印象を受けますが、他の生物にはこのような解釈の仕方は難し過ぎると考えられます。

採点方式で考えた場合

先程の4要素を100点満点で採点した場合、

①サイズ感:90点(ほぼ同じ)

②カラー:90点(ほぼ同じ)

③水押し:90点(ほぼ同じ)

④スピード:90点(ほぼ同じ)

合計360点

といった具合に、なかなかに高い総合得点を得られるぐらいに、カタクチイワシパターンにアジャストした質の良いアプローチが出来たと仮定してみます。そして、これでボコボコに釣ったとします。この場合、皆さんであれば勝因をどう解釈しますか?

少なくとも、4つもの要素で考える行為は非常に多角的であり、人間の脳だからこそマルチに複数の要素を扱えるだけであって、魚がこれらの要素を瞬時に総合的に判断しているとは考えにくいのではないかな、と現在私は考えています。

ようやく登場する『超正常刺激』

先程、魚の解釈は解像度が低く、粗い。と書きました。

例えば、

①サイズ感:0点(全然違う)

②カラー:0点(全然違う)

③水押し:500点(「似ている」を通り越した超正常刺激)

④スピード:0点(全然違う)

合計500点

こんな事になっている場合、どう解釈しますか?人間の目には、0点の項目が多すぎて「似ていない」と映るはずです。しかし、魚にとっては合計点数が先程よりも大幅に上回っており、猛烈に捕食の意欲を掻き立てられる状況です。

これこそが、人間と魚の分析能力の違い、つまりはルアーの見方の違いだと、現在私は解釈しています。

魚は解釈の解像度が低く粗いと表現したのは、こういう事です。いくら0点の項目があっても、突出した超高得点があれば、より強く魅力を感じるという考え方です。

先述のイトヨの例を再度出すと、赤は赤でも更に鮮やかな(もはや全然色味の違う)赤、そして赤い部分の面積を更に増した「オスの婚姻色を誇張しすぎた模型」を投入した際、人間からしたら「ここまでやったら流石に似てねえよw」と大脳で一瞬で判断出来るところを、魚は正直に誇張の分まで受け取って興奮してしまうという状態です。

この考え方であれば、『実績のあるルアーの造形がベイトに似ていなかろうが、さほど関係ない現象』を矛盾なく説明することが出来ます。

マッチザベイトの概念について

昨今ではこの概念は鉄板であり、ベイトの存在を考えたときに、それに「似ているか」、あるいは動き等を「演出出来るか」に焦点を当てるのが普通かと思います。私もこの考え方に倣っていた時期がありましたが、現在は、少なくともチニングにおいては違う考え方を持っています。

完璧な模倣をしても100点止まりなので、マッチザベイトの概念の中であれば、先程の採点方式の場合、指標は0~100点の範疇に留まるかと思います。しかし私は、超正常刺激の存在をルアーフィッシングにおいて強く予感させられることが多く、模倣を通り越した何か、500点、1000点、下手したらそれ以上の…そんな範囲にまでスコアは及んでいるんじゃないかな、なんて良く思います。マッチさせる、というよりは、バグを突く、というイメージに変わりつつあります。

名作ルアーって

逆に言えば、名作ルアーは何かしら一つの分野で、500点、1000点、下手したらそれ以上あるかもしれないようなかぎ刺激を発する能力を備えていると考える事が出来ます。

しかし、我々使い手にとっては、その『一つの分野』が具体的に何なのか、何がどういうメカニズムで効いているのか、詳細に解らないまま使っている…というのが現状かと思います。

例えば「カニが逃げるときの独特の水押しがチヌに対してのかぎ刺激になっていて、このルアーはその水押しを更に誇張したような水押しを出す事が出来る」といったような能力を、実はワームAが秘めていたとしても、現状我々には知る術がありません。

しかし、ワームがベイトに似ていなくても、何かしらの刺激が、バグのような形で彼らの食欲を掻き立てている事は確かなんじゃないかなと、最近強く思います。

そうしたメカニズムまで解るのは数十年後の話かもしれないですね。

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チニングにおけるベイトについて熱弁した回もあるよ↓

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