クロダイとキチヌの”キャラクター”について

生態・形態

突然ですが、『ウナギ目』という魚類のグループを御存じでしょうか?

所属する種は全員ニョロニョロとしており、ニホンウナギをはじめ、ウツボの仲間、アナゴの仲間、ハモの仲間、ウミヘビの仲間等がいます。

生態系における『ニッチ』の概念

ウナギ目でイメージすると非常にわかりやすいので、まずはウナギ目を例にお話ししたいのですが…

浅海から深海までの構造を大雑把に描くと、このような構造になっています。

そして、ウナギ目に限らず、全ての生物は生存競争により、それぞれの『ポジション』を獲得し、『棲み分け』が生じます。ウナギ目の魚達をここに配置すると、このようになります。

この図を見たときに、「覇権を握っている」のは誰でしょうか?もちろん、例えばアナゴが「俺はウツボを超えるぜ」などと考えている訳ではありません。生存競争の中で、一番美味しいポジションを占めているのは、(人間本位の視点で考えたときに)誰になるのでしょうか…

色々な考え方があると思いますが、メジャーな魚、平たく言えばスーパーに並ぶような知名度のある魚(マダイとか、ブリとか、トラフグとか、カワハギとか…)は、ほとんどが大陸棚上に生息しています。ここは日光が届き、光合成をする生物が生息している事で、生物の資源量がガッツリあるので、色々な餌が豊富にあります。また、水温が非常に安定しており、暮らしやすいです。深海のように深すぎると日光が届かなくなり、資源量が著しく少なくなります。水温は非常に低く、溶存酸素量も少なくなり、過酷な世界になります。逆に浅くなりすぎると、水温の変化が激しくなったり、降水や河川の流入によって塩濃度の変化が激しくなったり、別の脅威(海鳥等)に晒されたり…台風が通れば滅茶苦茶です。こちらはこちらで過酷になります。

そのため、大陸棚上の、浅すぎず深すぎない水域が一番おいしい場所と捉える事が出来ます。しかし、自然界は常に生存競争が働いているため、全員がこのおいしいポジションに居座れる訳ではありません。

生存競争に負け気味の種は、勝者とは少し違う生息環境に適応することを強いられます。ウナギに着目すると、浅海はウツボやアナゴ、ハモなどの強者(ガタイが良いというわけではなく、優れた生存戦略を持っているという意味合いです)が覇権を握っていますから、河川に適応し、産卵は深海で行う…という、勝者の土俵(浅海)から少しズラした形で軸足を置くわけです。また、摂る餌も、他の誰かがあまり手を付けていないものに手を付ける必要があります。ニホンウナギの場合であれば、半陸上での移動能力を高めることにより、大雨の日に濡れた地面に揚がり、酸欠で這い出たミミズを積極的に捕食したり、他の水系に分布を広げたりすることが知られています。

この考え方においては、浅海ではウツボやアナゴが覇権を握っており、ウナギは隙間産業に追いやられていると考えることが出来ます。

ようやく本題の『タイ科

では、タイ科の魚を先程の図に配置してみると、どのようになるのでしょうか?

あくまでも私個人の解釈ですが、マダイが覇権の中心におり、やや浅海寄りのポジションにヘダイ、やや深海寄りのポジションにキダイ、かなりの浅海~河川内のポジションにキビレ、更に河川の奥深くにクロダイ…といったイメージです(川から降りてくる時期はもちろんありますが、四季は一年で一サイクルですから、その中でいかに大きな割合で、自分の居場所を川の中に割くか…という意味合いでの表現です)。

デカいマダイは大企業

体が大きいという事は、『餌を摂るのに使うカロリー』と『餌から得られるカロリー』を天秤にかけたときに、後者の上回り度合がとても大きいということです。

会社に例えると、マダイは巨額の売上を出し続ける『大企業』です。当然、大陸棚の一番おいしい場所を占領します。

逆に言えば、ヘダイ、キチヌ、クロダイを会社に当てはめると『中小企業』です。となれば、マダイが牛耳っている主戦場以外の場所に、生存環境の軸足をずらさなければなりません。王道の経営方針ではなく、隙間産業を頑張る必要があります。そして、ヘダイ→キチヌ→クロダイの並び順で、 ややメジャー→ややニッチ→超ニッチ な生存戦略を取っていると私は解釈しています。

後編は…

こんな感じで、タイ科の代表的な四種のキャラクターについて、私の考え方をざっくりと紹介しました。後編では、『クロダイ聴力めちゃ良い説』を紹介します。

ヘダイマダイを専門で狙った時のエピソード

ヘダイ

静岡県ではヘダイの魚影が濃く、在住時に狙って釣る事が出来ました。釣り方は置き竿投げ釣りです。砂利浜から本格投げ竿で遊動天秤をぶん投げて、虫エサをぶっこんでアタリを待つ豪快でシンプルな釣りです。

この時に実績が高かった餌として、『マムシ』がありました。

イソメには「匂いで誘うタイプ」と「動きで誘うタイプ」があり、前者の場合であれば、塩漬けにしてカリカリにしても、ナマの状態と遜色ない効果を発揮します。マムシは典型的な匂いタイプで、塩漬けにした「塩マムシ」を用いて本種を釣っていました。とにかくマムシへの反応が良いのです。

ちなみに、同じ投げ釣り師のベテランアングラーさんと隣同士で釣りをして、5-0とかの戦績でボコボコにされたことがあります。両者ともにマムシを使ったのにも関わらず、です。餌釣りもホントに奥深いなあと思います。ちなみに、釣れ方としては、群れが到来したであろうタイミングでバタバタッと釣れ続き、その後は沈黙…というようなタイプです。ちょっとキビレっぽいよね。

容姿が好きで、小型個体を飼ってたりもしたよ。エメラルドグリーンの光沢がとても綺麗。この色味も、ちょっとキビレに近いよね。

マダイ

同じく置き竿投げ釣りで狙いましたが、餌は活きたユムシです。

とにかく引きが強い。単純に大きいからではなく、何か種族としての違いを感じました。この個体を釣った時は連日周囲でも釣果が聞かれており、胃の中から出てきたものとして、シタビラメ、タコ、細か~いアミ、カタクチイワシ等…かなり悪食のようです。

また、チャリコとの明確な違いとして、チャリコは群れの移動が釣果に反映されるような釣れ方の印象が強いですが、大型のマダイは単発的な釣れ方をする印象が強いです。群れというよりは、大型の個体一匹一匹が、つかず離れずの距離感で似たコースを練り歩いているような、そんなイメージを持っています。飛距離は正義、といったような釣りで、3色(25mマーキング)+15m力糸ですので、80~90m前後?の投下点で食ってきていると思います。

夜中に響くナイロン道糸の糸鳴りは一生忘れないですね。

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