メカジキとアカマンボウの構造から、真冬のチヌの「ハンデ」を推測する

・メカジキ
・アカマンボウ

という魚をご存じでしょうか?メカジキはそれなりに容姿のイメージがつく方も多いでしょうし、スーパーでも切り身をそれなりに見かけます。アカマンボウはそれに比べれば身近とは言えませんが、それなりに我々の口に入る程度には流通しています。

実はこの二種、体の構造を見ると、驚くべき機能を持っています。そして、これらの仕組みを学ぶと、真冬のチニングになんとなく活かせそうな部分が見えてきます。

体温について

我々人間を含む哺乳類は恒温動物です。人間であれば、常に体温を36℃近くに保っています。これによって、冬のように外気温が低下した状態でも、体全体のパフォーマンスを維持することが出来るので、外敵から逃げたり、獲物を捕らえる際に有利です。一方で常に燃料を燃やしている状態なので燃費が悪く、絶食に弱いです。一定間隔で食べ物を食べ続けなければいけません。

魚は変温動物です。体温は気温や水温に左右され、周りが冷えれば体も冷えてしまいます。それに伴い、肉体のパフォーマンスは落ち、外敵から逃げ遅れたり、獲物を捕らえる運動能力が乏しくなってしまったりします。しかしランニングコスト的なカロリー消費が少ないので、人間では考えられないような絶食にも耐えられます。

これが基本的な概念なのですが

魚類の一部には、恒温動物ほど完璧ではないにせよ、ある程度体温を周囲の水温より高く保つような機構を手にしかけている種がいます。

・サメやエイの一部
・サバ科の仲間の一部(マグロの仲間もここです)
・カジキやメカジキの仲間
・アカマンボウ類

等で知られています。

その中でもメカジキとアカマンボウの構造について、この記事では紹介します。

サバ科の青物を釣り上げると

ソウダガツオなんかを釣り上げると分かると思うのですが、水上では凄まじいハイピッチさで暴れて、携帯のバイブレーションのように振動しますよね。あれを放置しておくと身が高温になってしまい、マズくなってしまいます。

遊泳力に優れている外洋性の魚の筋肉は、それなりに動かすだけでかなり大きな発熱をします。

しかしその熱は、エラに送り込まれる際に一気に海水に冷やされてしまうので、恒温動物のような体温維持を為すことはありません。

メカジキについて

メカジキは、眼球と脳を血液で温める構造を持っています。

付近の発熱器官(ナトリウムポンプを空回しさせて発熱するらしいのですが、詳細は割愛します)によってここを重点的に温めます。

これによって、本来だったら低下する眼球や脳(人間のような大脳的な機能、いわゆる「考える」ようなものではなく、小脳的な機能、体の姿勢やバランスを無意識に整える運動能力的な部分ですね)の機能を落とさずに保ち続ける事が出来ます。

水温が低く光が無い深海を高速で遊泳するイカ類を捕食出来るように、このような進化を遂げたと考えられています。

アカマンボウについて

アカマンボウについては驚くべきことに、眼球や脳にとどまらず、体全体の温度を水温よりさらに高く保つ機能があることが知られています。

本来の魚であれば前述のように、温まった血液はエラで冷やされてしまうのですが、アカマンボウはその前に「エラから出てきた冷たい血液」を温める構造になっています。これにより熱を回収して再利用することで、体全体を温かく保つ仕組みを手にしています。

また、いわゆる普通の青物のように尾鰭を左右に振って泳ぐのではなく、鳥のように胸鰭を羽ばたかせて泳ぐので、一連の流れを胸元で完結させることができ、下半身の体表から温度が逃げていく事を防いでいます。

これらの事からチニングに活かせそうなこと

チヌを含むタイ科の魚には、今のところこうした機能は確認されていません。

そのため、真冬のチニングにおいて、クロダイやキチヌは変温動物らしい「捕食活動のし難さ」がある事は想像に難くありません。

その解像度を上げるうえで、メカジキとアカマンボウは大変参考になります。この二種が得ているアドバンテージと真逆の状態を考えればいいのです。

眼球について

メカジキは、全身を温められなくとも、脳と眼の機能だけは死守している、ともとれます。そのくらい優先順位が高い部位であることが考えられます。

眼球でいえば、眼球の向きを調整して眼差しの方向を変えるのにも、ピントを合わせるのにも、筋肉に動いてもらう必要があります。

つまりは真冬のチヌは、これらの機能がなかなか機能しないハンデを負っている事が考えられます。

イメージとして、「喰いたいけど体が動かない」よりももっと手前の段階、速めに動くリグを見ても「何アレ?」みたいな状態であることが考えられます。

とはいえ、冬のサイトチニングで様子を見ていると、ちゃんと見えている個体とそうでなさそうな個体の差はかなりありますけどね。人間でいうところのアスリートと運動音痴みたいな。

運動能力について

これについては、チヌに限らずルアーフィッシングの対象魚すべてに当てはまりそうですが、運動能力が低下します。筋肉はもちろん、それを制御する脳ですら本来のパフォーマンスを発揮出来ません。

また、ルアーフィッシングにおいては「捕食活動」の側面だけに目が行きがちですが、彼らにとっては「水鳥の脅威」も常に隣り合わせです。逃避にも勿論運動能力は必要です。

真夏はドシャローの見えチヌが極端に増加しますが、逆説的に考えれば「真冬にそういったことをするのはめちゃくちゃ危ない行為」のようなものだと私は推測しています。

だからこそ、真冬の命知らず系の見えチヌってアグレッシブさがあるから釣りやすいけどね…


この記事を通して

「真冬はスローな釣りが引き出しに無いと駄目だよね」
「ステイが無いと喰い込まないよね」
「魚の溜まり場を掘り当てないと難しいよね」

といった今までの「常識」みたいなものに異を唱えるつもりは毛頭ないのですが、それらが具体的に「なぜなのか」「チヌ達の感覚からするとどんな感じなのか」といった事まで考えた場合に、アカマンボウやメカジキの体の仕組みはある程度それに迫れる学びを得られます。

どちらもカジュアルでとても読みやすいです↓

ナショナルジオグラフィック
『伏兵アカマンボウの逆襲』https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150204/434322/061200005/?P=2

東京都島しょ農林水産総合センター
『メカジキのひみつ』
https://www.ifarc.metro.tokyo.lg.jp/archive/22,6167,43.html

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