クロダイとキチヌの「喰わせやすさ」と、その個体差について

正規分布について

例えば、渋谷で適当に3000人の身長や体重のデータを集めてグラフを作ると、このような形になります。

高校などで習った憶えがある方も多いかも知れません。このような形状を示す分布を正規分布と言います。

人間を含めた生物の個体差のバラつきをグラフに表すと、ほぼほぼ多くの項目で例外なく正規分布を取ることがわかっています。人間であれば、先程の身長や体重もそうですし、体力測定の上体起こしやハンドボール投げ、握力等の結果もそうです。もちろん動物の身長・体重や各種能力でも同様です。

よくある議論

例えば「アメリカ人と日本人では、どちらが身長が高いか?」といった問いがあった場合、どんな解答が正しいと思いますか?

簡便に答えるのであれば「アメリカ人の方が背が高い」で合ってる場合が多いかと思いますが、厳密に、丁寧に答えるとしたらどうでしょうか?

「アメリカ人の方が平均して身長が高い傾向にあるが、背が低いアメリカ人と比べた場合、それより背が高い日本人もいるし、その逆の場合もある」といったような、二者択一の回答では無く、やや込み入った答え方になりますよね。
「これはこう!」といった考察はダメだよね、といった内容の関連記事はこちら↓

クロダイとキチヌの性質に注目した場合、多くの議論は「クロダイはこう」「キビレはこう」といった語り口で解説される事が多い気がしますが、アメリカ人と日本人の例で示したように、明快な短文で傾向を示す事が難しい場合が多くあります。これは、個体間でのバラつきがある項目だから生じる事です。

クロダイとキチヌの「喰いやすさ」をもし比べる事が出来たら

※もし出来たら、という世界線です。現在の科学技術では、クロダイとキチヌの(釣りにおける)「喰わせやすさ」を数値化して、グラフで突き合わせて比べることは不可能だと思います。数十年後に、スパコンに数万匹の挙動を示させて、何かわかることがある…といった具合ではないでしょうか?

しかし、仮に可能なのであれば、両種の「喰わせやすさ」は正規分布を示すことについては間違いありません。その場合、二種はどんなグラフを示すのだろう…といった事を、私はよく考えていました。

しばらく考えるうちに、このような考え方に落ち着いているので、今回はそれを紹介したいと思います。

図にするとこんな感じ

もしシミュレート出来たと仮定した場合、このような重なり方になるのではないだろうか、というのが私の予想です。そして、これらが水温等の条件によってちょっとずつ変形するイメージを私は持っています。
※独断と偏見による体感値です。何か具体的にサンプルを取ってプロットした訳ではありません。

x軸は釣りの「パワフルさ(シンカーのウェイト帯やワームの水押し、動かすスピード等、ざっくりとしたイメージなのでどんな事でもOKです。とにかく釣りとして「強い方向」です)」であり、右に行くほどストロングな釣りを容認する個体、左に行くほどフィネスな釣りでないと拒んでくる個体、といったイメージです。
y軸は個体数です(母数は何万匹でも良いのですが…とにかくいっぱい、といったあたりです)。

この形から何が言えるのか?

①クロダイのグラフを見ると

何度も私のコンテンツ内で発信しているのですが、同所で隣り合う二匹のクロダイであったとしても、喰わせ易さは非常に大きな個体差があり、本当にまちまちです。簡単な個体はとんでもなく簡単ですし、難しい個体はとことん難しいです。この「個体差が非常に大きい」という部分をグラフで表現すると、左右に伸びた扁平な山になります。そして微積の関係で、クロダイとキチヌを同じ母数で比較しなければいけないので、左右に引き伸ばされた分、山の頂点は低くなります。

②キチヌのグラフを見ると

キチヌに着目すると、クロダイと比較してキュッと幅が狭まり、その分頂点が高くなっています。もちろん個体間のバラつきは存在しますが、クロダイより狭い範囲に収まっています。また、グラフは全体的にクロダイより右寄りに位置しています。強い釣りに追従して来るポテンシャルを考えると、このようになると私は考えています。また、山が左右に狭く上下に長い分、アジャスト成功時の爆発力が幾分高い傾向が窺えます。

とにかく一番大事な事が…

この二つのグラフを見た時に、重なっている領域がある、というのが、この図の最大のキモです

赤く塗りつぶしてある部分です。

この部分が無ければ、「クロダイはこういった性質がある」「キチヌはこういった性質がある」で終わる話なのですが、そうではありません。両者が重なる部分がある事によって、先程のアメリカ人と日本人の身長の例で言えば「アメリカ人の方が平均すれば高いものの、背が高い日本人が背の低いアメリカ人を上回る場合がある」といった具合の逆転現象が起き、一概には「こうだ!」と言えない状況を生んでいます。
チニングの話題で喩えてみると、仮に「クロダイはフィネスなメソッドの方が釣れる」といった場合、「いやいや、クロダイは全然ストロングな釣りで喰ってくるよ」という反論が生まれても何らおかしくありません。赤塗りの部分で示したように、それなりの割合で逆転現象が生じるためです。要はどっちも合っている上に、最初から「YES」か「NO」で結論が出ない議題で話が進んでいる訳です。

チニングで起きる事について更に深堀りした場合

私が過去に、クロダイについて、「フィネスな方が釣れる」「遅いスピード帯の方が釣れる」という発信をした際、フリーリグを主力にされている遠投派のアングラーの方々から「そんな事は無い」とボコボコにされた事があります。

しかしこれは私の言葉足らずな面が全面的に悪く、最初の問いがそもそも非建設的なものになってしまっています。まさに、「アメリカ人と日本人はどちらが背が高いのか?」といった類の問いでスタートしてしまっています。厳密な言い回しで解答をまとめ直すと

↑①強い釣りを中心に組み立てても、場合によっては両種ともに拾うことが出来る(青塗りの部分と、両者が重なる赤色の部分ですね)。


↑②しかし、クロダイの波形(紫)だけに注目した場合、頂点より左側の個体(緑で塗った部分ですね)の取りこぼしていた個体も拾えるので、(状況次第ではありますが、概ね)フィネスなメソッドがクロダイに抜群に効く。と言えるのではないでしょうか。

注意

これはあくまでも、
・クロダイとキチヌが同数、均一にムラなく分布している
といったようなあり得ない状況下で、もし簡易的にコンピュータ的にシミュレーションにかけるとどうなるか、という話をしています。現実では、数えきれないぐらい多くの要因が複雑に絡み合っています。これだけで実釣の手応えと比較する場合、色々と考慮していない要素が多過ぎます。しかし、『活性の理論値だけ』に着目した場合、このようなものになるのではないかと私は現在考えています。

余談:冬のハリーシュリンプの謎がこの概念で解けた気がする

幾年前の少し古い価値観かも知れませんが、「冬のチニングにはハリーシュリンプが抜群に効く」といった鉄板の定説がありましたよね。

私も超絶愛用しております。

もちろん夏にも抜群に釣れますし、超優秀なワームであることには間違いないのですが、なぜ「冬に際立った効果を実感できるのか?」といった部分はかなり謎でした。

というのも、実際に使いこむと「一年中めちゃくちゃ釣れる」し、「パワフルな釣りでもフィネスな釣りでも強い」んですが、その言説がなぜ生まれたのかについて、私は長年悩んできました。

一個一個要素を紐解くと

マテリアルに注目すると「かなり柔らかめ」、脚などの稼働パーツに注目すると「かなり細くて繊細」であることから、非常に低速レスポンスに秀でたワームであることがわかりますし、実際に使うとその性能は疑いようがありません。

※『ワームのマテリアルと造形による四分類』的な記事を今後製作するつもりなので、詳細はそちらに記載します。お待ちいただけると嬉しいです。

厳冬期に関して、もし仮に「クロダイのグラフより全体的に右寄りに位置していたキチヌのグラフが、水温の低下によって左側に寄ってくる」としたらどうだろうか?なんて考えてみました。魚は変温動物です。「強い釣り」への追従力が低水温によって少しずつ失われたと考えた場合、どうでしょうか?

この場合、ハリーシュリンプが、というよりかは「①柔らかいマテリアルで②繊細なパーツを多く備えたワーム」がハマるキビレの割合が冬に増えて来る、といった「相対的な割合の変化」によって、この説が生まれた理由を説明できるのではないかと思います。
フラッターチューブとか当時はないしね。

とはいえ、元々この範囲をメインに据えてクロダイ釣りをすると、別に冬に際立った効果を感じることは無く、とにかく一年中強いです。どちらかといえば、冬にこのゾーンに入ってくるキビレの割合が多くなるので、そういった釣りがメインの方はそう感じるのでは?なんて思ったりもしてます。

最後に:

かなり逆説的というか、結論ありきで長年悩んだ結果、大鉄則に矛盾しないようにどうにか理論を組み立てると「こうとしか思えん…」みたいな感じで生まれた仮説です。2026年6月現在では私はこう思っていますが、突然コロッと変わるかもしれません。その時はまた記事を書きたいと思います。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

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