『超正常刺激』(Supernormal Stimulus)という現象をご存知でしょうか?
オランダの動物行動学者のニコラース=ティンバーゲン(Nikolaas Tinbergen)先生が確立した理論で、超ざっくりとまとめると、「本物よりも本物らしさを誇張したニセモノに、本能がバグってしまう現象」の事です。
ちなみにこの先生は研究者一家のエリート家系らしいです。
この説明だけではいまいちピンと来ないと思いますので、いくつかの生物における例を挙げて説明します。
というのも、チニングを含め、多くのルアーフィッシングの理解を深めるにあたり、これは非常に重要な概念だと私は考えています。
例1:イトヨのオスの攻撃性
イトヨという、大きくても10cm程の淡水魚がいます。巣穴を作ってそこに産卵するタイプの魚で、繁殖期にはオスの腹側が鮮やかな赤色になります。

この時期になると、オスはオス同士で縄張り意識を持ち合い、お互いを激しく追い払います。
飼育実験下で、上の図のような模型をいくつか近付けてみると、もはや魚に似ていないようなシルエットの模型でも、『目』と『赤く塗った下半分の領域』さえ有していれば、激しく攻撃します。このような現象において、ここでいうところの赤いお腹のように、特定の行動を引き起こす特徴的な刺激を『信号刺激』『かぎ刺激』なんて言ったりします。
また、実際のイトヨで見られるようなオレンジがかった赤よりも、更に彩度の高い真っ赤な塗装を腹側に施した模型や、赤色の部分の面積をより増した模型に、オスはより激しく攻撃を仕掛ける事が解っています。
このように、本来自然界ではあり得ないレベルの誇張に生物がバグってしまう事を『超正常刺激』と呼び、イトヨの実験例は非常に有名です。
私が4歳のときに、親戚のおばさんに貰った図鑑が私を魚キチガイに染め上げたのですが、そんな子供向けの図鑑にさえ、この実験が載っているほどでした。↓↓↓
他の例では…
ハイイロガンという鳥が、将来的に健康的で生存率の高い見込みがある大きな卵を優先的に温める傾向を捉え、あり得ないぐらい大きい卵の模型を子守中の母親の巣に忍ばせると、他の卵をそっちのけで、大きい模型を熱心に温めたりすることも解っています。
昆虫のチョウなんかの例もありますが、今回は魚の話なので割愛します。
人間では?
超わかりやすく、イメージしやすい例が存在します。
それが、ジャンクフードやスナック菓子です。
これらに多く含まれている、脂質や糖分について考えてみましょう。
「今日はラーメンの気分だな」「ケーキを食べたい気分だな」といったような食欲の方向性のムラは、脳が無意識のうちに、やや欠乏している成分を補うために出している信号です。ミネラル分が不足していればしょっぱいものを、糖分が不足していれば甘いものを食べたくなるように、無意識下で脳が指令を出して、欲求でその後の行動を決定づけています。
かつて狩猟時代を過ごしていた頃の人間は、脂質や糖分などといったものは、ハイカロリーなご褒美・お宝であり、滅多に手に入らないものでした。

ガソリン満タンの状態を100として、そこらへんの山菜で1のカロリーが摂れると仮定した場合、脂質や糖分は15や20ほどのカロリーが一気に手に入るようなお宝燃料です。脳みそがこれらの物質を摂った時に快楽物質を出すことで、こうしたものが多く含まれる食材を積極的に探すように本能はプログラムされています。
しかし人類の文明は急激に発展し、とんでもない食べ物を生み出しました。


私の好物達↑
もはやジャンクフードやスナック菓子は、300、400、500といったレベルのエネルギーを手に入れる事が出来ます。しかし、人間の脳みそがこうしたものを食べたときに快楽物質を出す本能は書き換わっていません。そして、そもそも100以上の量でそんなお宝が手に入る前提のデザインをしていません。
なので、ジャンクフードやスナック菓子を食べるとまさに『超正常刺激』が起こり、「美味すぎる!!!」と、あり得ないレベルの幸福感に包まれる訳です。
で、チニングにおいては?
いよいよ本題の、「チニングと超正常刺激」の関連性について、書いていきたいと思います。
前置きでかなり長くなってしまったので、続きは下のリンクの後編で…





コメント