ワームをボロボロにしてしまうため、チニングでは厄介者扱いのフグですが、冷静に魚として見てみると、なかなか面白い特徴があるなと良く思います。
今回の記事では、フグ類の特徴について、
①飼育
②採集
③釣り
の三つの視点から考えてみようと思います。
【飼育面では】
飼っていて解る事としては、こんな事があります。
目も鼻も良い
魚を飼っていると、餌を与えた際、何の感覚を使って餌を認識しているのかをはっきりと観察する事が出来ます。そんな中でフグを見ていると感じるのは、「こいつ、目も鼻も良いな…」といった事だったりします。
目は良いけど鼻は良くない魚、逆に目は悪いけど鼻は良い魚なんかは結構います。しかし、双方ともに感覚が優秀な魚は、意外と少ないように思います(同じフグ目のカワハギの仲間なんかにも、私は「目も鼻も良い」という同じような印象を持っています)。
例えばウナギやアナゴなんかは、目が悪くて鼻が良い魚として典型的ですが、水槽の中に餌を投入すると、まずは匂いを察知して水槽内で暴れ始めます。その際、両目で餌を直視して一目散に寄って来る事は無く、水槽の底面をひたすら動き回って塗りつぶし、餌と顔が偶然接触すると「!」といった感じで喰いつくような食べ方をします。
逆に目が良い魚、エソやメッキなんかは、完全に視覚優位で餌を認識します。こういったタイプの魚がペレット状の人工飼料を餌として認識してくれない場合、餌付けのテクニックとして、毎日一定の場所(例えば水槽の右手前の角、みたいな感じです)からナマの餌を投入し続け、ある程度日数が経って「餌が出て来る位置」を覚えさせた上で、突然同じ場所からペレットを投入した場合、勢いで喰い付いて誤飲してしまうことがあります。その際「ん!?なんか食感が変だけど、まあ美味しいからいっか…」みたいな感じで、今まで無視していた人工飼料をその日から食べるようになったりします。
こういった感じで、私の中で、嗅覚優位な魚、視覚優位の魚、といったようななんとなくの印象が各グループに対してあるのですが、フグはどっちも優秀という印象が強いです。
学習能力が高い
フグは他の魚の鰭をかじってしまうような悪さをするため、セパレーターという板(網状だったり、細かい穴がたくさん空いているプラスチックの板だったりします)で水槽を仕切って単独の状態にすることがよくあります。
その際、初めは興味すら示さなかった人工飼料でも、網や透明の板越しに他の魚がその人工飼料を食べているのを見ると、「あ、これは食べられるんだ」といった具合で学習し、食べるようになることがあります。
別にフグ特有の現象という訳では無く、他の魚でもこうした現象は見られたりしますが、フグはとりわけこういった部分の学習が早く、頭が良いなと感じます。
拒食を起こしやすい
結構、長期飼育の難易度が高い魚だなと思います。その原因として、明らかに他の魚より拒食を起こしやすいという部分があります。全然グルメではない魚であれば、毎日毎日同じ餌を与え続けても美味しそうにガッツいてくれますが、フグはそういった事をすると「飽きました。」と言わんばかりに突然食べなくなったりします。水質の悪化や混泳メンツの変化等によるストレスでもすぐに拒食を起こします。
【採集の面では】
野生のフグを手網なんかで採集する場合、フグはどんな印象なのでしょうか。
自衛能力に自信があり過ぎる立ち振る舞いをする
ミノカサゴなんかもそうなんですが、毒等を交えた強力な自衛能力がある魚は、我々のような何倍も大きい上位存在が近づいてきても、さほど逃げません。「なんかデカイのが近づいてきたから、一応逃げておくか…」といった行動をサボります。
そのため、採集はとてもイージーです。
チヌなんかは、どう考えても負けようがない自分より小さいルアーにビビり散らかして逃げたりしますが、クサフグなんかは、小さくても自分より大きいルアーを追い回したりしますよね(水槽で飼っていると、自分より大きい魚を食べるというよりは、鰭などの細かい部分をかじり取ろうとするムーブが目立ちますので、そういった狙いもあるかもしれません)。
ガッツリ寝る
夜に魚を採集すると、寝ていて採集しやすい反面、意外と足早に逃げたりもして、人間と魚の睡眠の質の違いを痛感します。
しかしフグについては、疲れた人間の如く、とんでもない熟睡を見せます。先程も述べましたが、採集は超イージーです。
かわいいね。
【釣りの面では】
これについては、皆さんがフグに持つ印象とほぼ同じでしょうから、特段語る事はありません。とにかく好奇心旺盛で、積極的にワームをボロボロにしてきます。
【その他の特徴】
フグと言えば「膨らむ」という一番の特徴がありますが、それ以外にも結構特徴的な部分があります。
泳ぐときに使う鰭がちょっと変
普通の魚は、推進時に尾鰭を使います。どう考えてもそれが普通なのですが、フグ目の魚は背鰭と尻鰭をマンボウのように左右に振って推進力を得ます。そのとき、大概尾鰭は畳んだ扇子のように閉じています。


同じフグ目のカワハギの仲間も同じ泳ぎ方をしますね。これはかなり類を見ない泳ぎ方です。

水族館で撮ったウマヅラハギです。尾鰭は完全に畳んでいてほぼ使っていません。代わりに背鰭と尻鰭を主力にして泳いでいます。めちゃくちゃ解り易い。
高速で巡行するのではなく、基質に付着している藻類や無脊椎動物をついばむ生態に起因しています(カワハギもまさに同様ですよね)。この際、ホバリングであったり、体勢の微調整だったり、そういった部分が求められますので、この手の生態に基づいた進化でしょうね。
ちなみに、例外中の例外であるセンニンフグ(外洋特化の進化を遂げた、青物みたいな細長い大型フグです)なんかは、青物みたいな普通の二股の尾鰭をしており、普通に泳ぎます(笑)。

こういう魚雷みたいなフグがいます。
外洋では速度が出せないと話になりませんよね。
両眼視野を駆使する
哺乳類だと、シマウマとライオンの目の付き方を見ると解るように、視野の広さが必要な種族(外敵をいち早く見つける必要がある)は顔の横側に目がついており、前後の距離感を測る能力が必要な種族(獲物等との距離感を正しく測る)は目が前方についています。

魚は肉食であろうが草食であろうが、ほとんどの場合、横側に目が付いたシマウマタイプである事が多いです。しかし、フグは魚としてはかなり珍しい「ライオンタイプ」の目の付き方をしています。ハコフグが餌を食べるときなんかはものすごく寄り目になってとても可愛いのですが、これは両眼視野を駆使する生態であることを示しています。

もちろんチヌも捕食時には寄り目になるのですが、横向きについている目を無理やり前に向けている感じですよね。
フグの場合は人間の如く、真ん前を向きます。

ハコフグなんかに餌を与えると、とんでもなく寄り目になります。
これも先述の「基質の表面の餌をついばむ」生態に特化した進化と言えます。ピントが合わなくては話になりません。
最後に
自分の中で思い入れのある二種類のフグを語って、私事で〆たいと思います。

南米淡水フグ
アマゾン川に生息する、純淡水性のフグです。和名はないので「南米淡水フグ」は入荷時のインボイスでしかないのですが、似た外見のものが複数種類いるとされています。ミドリフグ等が淡水フグという触れ込みで販売される事がありますが、本質的には淡水にも一定期間順応出来る海水魚であり、ずーっと淡水で飼い続けると突然死したりします。
一方でこの南米淡水フグは完全な淡水性です。
他にも東南アジアやアフリカなんかに、思いのほか純淡水性のフグは存在していますね。

メガネフグ
クサフグと同属の近い仲間です。河口域に生息しています。奇抜で個性的な模様に魅せられて飼育していました。この模様は個体ごとに若干のバリエーションがあったりしてコレクションし甲斐があるのですが、コアな熱帯魚ショップ等にしか入荷せず、入手が難しかったです。

ド派手な変異個体もいて、無茶苦茶魅力的でした。入荷し次第売約かけて買ってました笑
これらは十年近く前の事なのですが、メガネフグが輸出されていた中国では最近資源管理の規制が強化され、ここのところ日本への入荷は皆無になってしまいました。
現場では食用魚としての需要が結構あるらしいです。
以上です
チニングをする上では厄介ですが、魚としてはとても面白い仲間です。
最後までお読みいただきありがとうございました。



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