大型のクロダイって、黒っぽくて傷が多い個体と、綺麗な銀色で鰭の欠けや外傷の少ない個体がいますよね。
よく、前者を『居着き個体』、後者を『回遊個体』なんて言ったりしますよね。
この2タイプの違いについて、「何がどう違うのか」といった問いに対して、自分の中でずっと答えを出せずにいます。
今から書くことはまだまだ根拠に欠ける仮説であり、胸を張って「こうだ!」と言えるものではありません。
しかし、今日の釣果でハッとした事がいくつかあったので、取り急ぎ現状の仮説っぽいものを書いてみました。
個人的にずっと疑問だったこと
居着いているから居着き個体、回遊しているから回遊個体、…
で済ませられれば話は簡単なのですが、私としては、とてもそうは思えない部分がありました。
小規模河川に二日連続で訪れると、いわゆる『居着き』らしい風貌の個体達が、一晩で川一体から忽然と姿を消していたり、一心不乱に猛スピードで川を昇り降りする回遊のような行動をしていたり…居着きというワードとは矛盾する動きを見せることが多々あります。
『居着き』と『回遊』という分け方については、かねてから疑問に思っていました。
混在してるって変だよね
また、居着き個体と回遊個体できっぱりと生息エリアが分かれているのなら話はわかるのですが、サイトをやりまくった結果、この2タイプはごちゃまぜである事が大半で、ここも不可解な部分でした。そしてそんな中でも、黒っぽくて小汚い大型個体は夏に最も多くなる、という傾向を強く感じていました。
マダイで知られている事としては
養殖マダイでわりかし有名な事として、浅場の養殖棚で太陽光を浴びせすぎると、マダイが黒ずんでしまい、商品価値が落ちるという現象があります。
夏場の真っ黒な大型のチヌなんかは、メカニズムとしては同じなのかもしれないのですが、ほぼほぼ同所に綺麗な個体が混在している事も多く、ここも意味が解らない謎ポイントでした。
他にも、知られている事として…
外傷があったり、でかめの寄生虫が体表についてしまった魚のうち、塩濃度の変化に耐性がある魚は、自ら汽水域に侵入し、体液の流出を防ぐ事が知られています。魚の体液の塩濃度は、海水よりも薄く真水よりも濃い、いわゆる汽水域の範疇に収まる濃さをしています。体液と周囲の水の濃度をアジャストさせることにより、傷口から体液が浸透圧で流れ出す事を防ぐ事が出来ます。
この現象の応用として、淡水魚が病気になってしまったときに、体液に近い薄い塩水に漬けることで、浸透圧を体内と体外で同一にして、体液の流出を防ぎ、そこに割いていた体力を免疫の方に回してあげる治療法(塩水欲)がありますね。
金魚とか病気になったら塩水に漬けますけど、塩が病原体を殺すんじゃなくて、浸透圧調整で浪費していた体力を回復の方に回してあげる感じなんですよね。
シーバスのベイトとして知られるサヨリ(特に、鉛筆より細いような15㎝ほどの幼魚)を河口の汽水域で捕まえると…「よく死なないな…」と心配になるような大きさのサヨリヤドリムシ(ダンゴムシみたいな寄生虫です)がついていたりします。
この点については、川の中の大型のチヌに傷や出血が多い事、肌がなんとなく汚い事、チョウの仲間(寄生虫)が多い事と関連性がありそうですよね。
しかし、2月に事件が…
2月16日に、小規模水路でチニングをしていたときの事でした。

それはそれは綺麗な魚体の、かなりデカい(メジャーを持っていなかったのですが、45の枠を大幅にはみ出す年無し級の)チヌを手にすることが出来ました。
45㎝以上あるような大型個体は、居着きっぽい風貌のものがほとんどで、夏に特に多い、というのが私の感覚でした。綺麗なのにここまで大きい個体、しかも二月に…となると、色々な部分で意外性のある、レアケースの個体でした。
この個体は、細い水路のかなり奥まで入り込んでおり、足元のシャローをうろついていました。
そして、
・2月であること
・川のようで川でない、純海水の水路であること
・もうほぼほぼ成長の余地が無さそうな大型個体であること
を含めて、私の中に一つの説が浮かびました。
川に入りたての時は綺麗だった説
それはずばり、夏に見る大型の小汚い個体は、早春に川に入る段階ではそこそこ綺麗だったんじゃね?という説です。
私は、他の記事でも述べているように、東京湾の河川を出入りするクロダイは、大半の個体は真冬に川から抜けて、早春から初夏にかけて徐々に黒潮域から帰ってくるという仮説を立てているのですが…
少なくとも、私がよく周る神奈川~東京~千葉の小規模河川においては、3月~6月にかけて、徐々に見えチヌの数が増えていきます。徐々に増えるということは、それぞれの個体において、川に入る季節にそれなりのバラつきがあるはずです。
そして、入った個体達の中でも、シャローに腹を括って本気で適応しにいくグループと、それほどではないグループがいて、前者が特に黒くなっているような予感がします(フォロワーさんが「近距離の個体は黒くて汚い個体が多く、遠距離で掛けた個体は綺麗な事が多い」と仰り、賛同すると同時に、水深の違いが最も大きな影響としてあるのではないかと連想させられました)。
黒くなるメカニズムは、前述のマダイの話と同じで、光量によるものではないかと考えています。
そしておそらくこの変化は数か月以上を要し、最も光量の強い真夏に、黒い個体数がピークを迎えるようなサイクルになっているのではないかと思わされました。
・2月だったからこそ、まだ居着きの黒っぽい風貌になっておらず、
・黒潮の当たる海域(三浦や館山の地磯とか…)からは離れてきたものの、川の水は冷たすぎるので、海水域の内湾をウロウロしている中途半端な段階であり、
・ここから数か月かけて居着きらしい風貌に変わっていく
のではないか…
と直感的に思ったのでした。
ドシャローに黒っぽい個体とそうでもない個体が混在している状況も、川に入る時期が数か月単位でばらつきがあることで説明がつきますしね。
また、別の記事で、「海に降りる個体とは別に、少数河川に残り続ける個体がいる」といったことも話しているのですが、こうした個体はシャローに留まり続けるはずですから、通年居着きの風貌のままの個体もいるのではないかとも思えます。実際、今日釣った4匹のうち1匹は、(夏のものほどではないですが)ややソッチ寄りの見た目をしていました。

とはいえ、n=1のしょぼい仮説です
いままで、色々な謂われ方を見つつも、「どれもしっくり来ないな~」と思っていたところに、衝撃をもたらす不思議な個体が釣れた、というお話でした。
それに伴って、点の状態で散在していた持論がいくつか繋がった気がして、その感覚を記事にしてみました。
↓東京湾に生息するクロダイの季節ごとの大まかな移動パターンについては、こちらにより詳しく持論を書いてあります。



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