注意
これから「感度」についての文を書きます。しかしこれについては、多くの要素が複雑に絡まって起きる現象故に、色々と議論がとっ散らかりがちです。
まず「手感度」と「目感度」の話を分別しないとめちゃくちゃになってしまうのですが、ここでは置き竿の穂先に注目し続けた状態で「どのくらい鮮明にアタリが出るか」といった視線でお話しします。チニングで重要になって来る手感度、つまりはそれに伴うロッドやリール、リグ等の話には触れず、純粋に「ラインの比重とアタリの出方」について語ります。
『アトミックスライダー』からの学び
置き竿の大物投げ釣りの世界で、大定番と言えるナイロンラインがあります。『アトミックスライダー』です。



この三色のモデルなのですが、ライン比重が微妙に違います。比重が軽い順に「イエローグリーン」「アーデントピンク」「オレンジ」となっており、それぞれの具体的な比重は「1.12」「1.13」「1.14」です。一見かなり繊細な違いで、「誤差」レベルのように見えますが、これが全然違うんです。ルアーフィッシングの世界に出回っている『高比重PEライン』は、小数点以下第一位で大きな違いがあります(例えば、よつあみ社のオードラゴンX8で1.20、サンライン社のオールマイトで1.48)。しかし、アトミックスライダーの3ラインナップについては、それらより遥かに微細な違いです。
しかし、微差と侮るなかれ、これらの使用感が全然違うのです。
いきなりこの記事の結論を言ってしまいますが、これらの中で一番真ん中の『アーデントピンク』、要は軽すぎず重すぎずな比重が一番カワハギのアタリを取れたと記憶しています。
もりぞープロが多用しているダイワの磯センサーとかは、1.1~1.2ってとこで、納得の塩梅だよね。
比重が異なるだけで、ありとあらゆる事が変わってくる
とにかく変わる要素がいっぱいありますが、一個ずつ考えたいと思います(太さは、特別記載がない限り同条件として考えます)。
潮馴染み
私は過去に、『コイチ』というニベの仲間を狙うために、幾度も、静岡県から岡山県・熊本県に遠征していたことがあります。

目が覚めるような黄金色の、美しいイシモチが居るんです。
この魚が生息する瀬戸内海や有明海の潮位差は非常に大きく、それに応じて潮流も非常に速いものとなります。しかも、そんな海域の中でも、この魚は特に潮当たりの良いポイントを好みます。
そんな激流ポイントで釣りをするとまず一撃でわかる事として、『同じ太さであれば、比重の大きいラインほど捌きやすい』という点です。
もちろん状況によりけりですが、より簡潔にまとめると、「潮が当たる事によるライン軌道の(横方向への)たるみ」が少なくなります。
風への耐性
風になびかれるラインの挙動も、上記の潮の影響に近い特性があります。風が強い日であれば、風になびかれて軌道がたるむのに対し、重いラインは自ら軌道を下方向へ補正するので、軌道だけ見れば素直になりやすいです。
実釣で起きる現象は極めて複雑
これだけでは、単純に重いラインの方が良く見えますが、とにかく、まだまだ変化する事がいっぱいあります。

投げ釣りでは、カワハギも非常にメジャーなターゲットであり、これを狙う釣りはとにかく面白いです。高感度なセッティングが求められることは皆さまも周知の通りだと思います。「餌を取るのが上手い」事は言わずもがなですが、ベラ類やフグ類等と必ず混在しており、それらをかわして本命に餌を届ける事に苦難します。そこがとても面白いのです。が…
ラインの伸び
ラインには伸び率があります。遠距離ほど伸びの影響を大きく受け、アタリの減衰も大きくなります。
「ライン 伸び率」で検索すると、一般的には「破断強度」が出てきます(ナイロン20~30%、PE3~5%、みたいな…)。
これは「ん゛~~」とラインを全力で引っ張り、弾けて切れた際の最後の瞬間の伸び率を表したものであり、魚の引きやロッドアクションで起こり得る伸びよりも遥かに大きい数字が記載されています。
ちなみに、同一素材であれば太い径のラインほど伸びません。
カワハギ釣りの場合、どう考えても伸びが圧倒的に少ないPE素材の方が優れている…と思いきや、優れた性能の高比重PEが登場する近年までは、意外にも投げカワハギの世界においては、ナイロン派も根強く存在していました。というのも、思いのほかナイロン道糸で繊細なアタリが取れるんです。それも、遠投の距離を考えると極めて不可解なほどです。
かなり遠投しても意外とカワハギのアタリは減衰しない
これはもう実体験として感じるほか無いのですが、伸びがあるはずのナイロン道糸で、かなり遠くに仕掛けがある状態でも、ふと冷静に考えると不可解なくらい「ガガッ」とアタリが出ます。
かなり遠投しているにも関わらず、まるで足元の尺カワハギが乱暴に餌をひったくる様子を想起させる、鮮明なアタリの出方をします。
この現象について、私は現在こう解釈しています。
滅茶苦茶雑な計算ですが、穂先から海底までの高低差が10mあるとして、
①100m投げた場合
②50m投げた場合
③25m投げた場合
④10m投げた場合
で、『カワハギが(水平方向に)4cmラインを引っ張った場合』、手元にはどれほどのアタリが来るのか、簡易な三角関数を用いて計算してみましょう。

※もちろん、実際のライン軌道はこんなにきれいな直線ではありません。あくまでも雑な計算です。
過程を端追って結果だけを貼ると、
①100m投げた場合…3.98cm
②50m投げた場合…3.92cm
③25m投げた場合…3.72cm
④10m投げた場合…2.83cm
意外にも、図面上で位置関係だけ計算すると、遠投した方がアタリは大きく出る事になります。実釣時は極めて多くの要因によるアタリの減衰が起きるのでそんな訳は無いのですが、位置関係だけで考えれば、意外にもこのような結果になります。現場での体感でいうと、先程も述べたように「遠投しても、その割にアタリの強さが減衰しないな」といった事が起きます。
他にもカレイ等のターゲットのような、餌を口にした後、さほど泳がない魚を遠投&置き竿で狙う世界では、この現象をかなり強く感じる事が出来ます。
この現象が一番起きやすいのは
ラインの比重の部分に少し話を戻すと、そこそこ遠投する場合、今紹介した現象が強く起きる状況と、さほど起きない状況があると感じています。その差は何かというと、ズバリ、ラインの軌道です。三種のPEライン+フロロカーボンリーダーを想定した場合、
①比重0.98程度のライン(真水よりやや軽い)
②比重1.0程度のライン(真水と同等)
③比重1.4程度のライン(海水とほぼ同等)
で軌道を比較すると、概ねこのようになると思います(結構誇張した表現で描いてます)。

この中で先程の「遠投した割には不可解なほどアタリを鮮明に取れる」のは、経験上、最も直線に近い②(黄色で示しています)の軌道です。
一方、冒頭で紹介した投げ釣りのナイロン三種は、上の図で示したライン軌道の中でも②の黄色に近い範疇にどれも収まっています。その中でも上にずらすか、下にずらすか、という細やかなチョイスをする際にバリエーションが必要になってきます。投げ釣りの領域の遠投では、ポイントによって遠浅とドン深の差から受ける影響がかなり激しく、マメなアジャストが必要です。まだ高比重PEが市場に十分に出回っていなかった頃は、これらの影響によって「なんだかんだでナイロンの方がアタリが取りやすい」問題が起きていたため、ルアーフィッシングで圧倒的にPEが普及していても、ナイロンを一貫して使う方も多かったんです。悪天候では特に、通常比重のPEの「横風への弱さ」「急流への弱さ」が露呈する事も多く、尚更でした。
チニングでは
現在国内各所で様々なスタイルのチニングがあり、それによって求められるライン比重は変わるとは思いますが、あくまでも現在のフリーリグのオーソドックスに従った場合、
・岸から沖に掛けての勾配
・汽水の比重
・チニングにおける最もオーソドックスな飛距離帯
の部分で「普通」を取った場合、1.0~1.2付近の比重のラインが、最も「遠くに投げてもアタリが明確さを維持する」現象を再現出来る気がしています。
アーマードFシリーズの「比重1.0」が未だに界隈で圧倒的な支持を得ている面としては、物性的にベイトリールでの使用に耐えうる面も勿論ですが、感度面でものすごく「しっくり来る」のが要因としてあると思います。「感度が良い部類」に感じる原因として、伸び率の低さといったうわべだけの特徴ではなく、これらの現象がバチっと「多くのユーザーのシチュエーションにハマっている」事が挙げられると思います。
一方、ここで示した「普通のシチュエーション」を逸脱した場合は、ハマらないという事が起きます。ひたすらに近距離をブラインドで攻める場合、手感度を追い求めると「これらよりもほんのちょっとだけ重いライン(1.1~1.2程度)」に行き着くと思います。


最近では、
ゴーセン アンサー ワイルドジャーク PE×9 シンキング (比重1.2台)
バリバス スーパートラウトアドバンス ダブルクロスPE X8(比重1.12)
あたりを、ごく近距離のブラインドに抜擢している事が多いです。
以上です
「感度」については釣り人の永遠のテーマだと思いますが、今回は「投げカワハギにおいて、かなり遠投してもさほどアタリが減衰しない不可解な現象」を軸に書いてみました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。



コメント