『スレたチヌ』について世界一詳しく解説 【前編】

気付き・発見・学び

「ここのチヌはスレていて釣れない」…

よく聞く言葉ですよね。

ありがたすぎる研究がすでにあります

実は、マダイを用いた研究で、「スレる」という現象のメカニズム究明にかなり近しい事を、高橋宏司先生・益田玲爾先生が報告されています。

本文のリンクは最後に貼るのですが、英語の論文ですので、とりあえず、私が口語訳した文章を貼ります。

とにかく世界一易しく、(タイトル含め)世界一解りやすい文体を目指して意訳しております。精確・精密なワードチョイスで訳したわけではありません。ご了承ください。

『マダイの幼魚が「釣られる」事を回避する学習メカニズム ―飼育実験を主体とした検証―』

要旨

(ネタバレ過ぎるので略)

動機と背景

(資源保護の観点がメインなので略)

材料と方法

畜養水槽には水量500ℓの透明ポリエチレン製容器(自然光下)を用い、マダイを受精卵(2万個)の段階から育成しました。毎分4ℓのエアレーション(金魚とかのぶくぶくですね)を施し、水温は20℃を維持しました。海水は、研究所付近で汲み上げたものを濾過して使用しました。

シオミズツボワムシ(っていう超小さい動物プランクトンがいます。孵化したての小さすぎる赤ちゃんに与えます)、アルテミア(所謂ブラインシュリンプで、もう少し大きくなってきたら与えます)のノープリウス幼生、ペレット飼料(おとひめ系)(ホームセンターや熱帯魚屋さんに売っている、一般的にイメージされるような、顆粒の『魚の餌』です)を成長に応じて与えました。

2013年5月17日に孵化したものを9ヶ月以上育成し、体長10~13cm程度になったマダイの幼魚のうち、22尾を実験に使用しました。

実験水槽には、11台のポリプロピレン製コンテナ(ブルー)(66x45x33cm)を用い、水を張った際に水深25㎝となるようにしました。

ここにマダイの幼魚を1水槽につき1尾投入し、朝夕1回ずつ餌を与え、3日間慣れさせました。

その後、翌朝にペレット飼料を与え、30秒以内に食べだす事を確認してから、即座に実験を開始しました。

倫理面での注意事項

(略)

実験1: 回避行動の習得と、学習を通じた行動の変化

釣りの仕掛けにつけられた餌を回避する学習は起きるのか、また、起きた場合どのくらい早く学習が進むのかを検証しました。

毎日、

①食欲があるかどうかの確認

②実際に釣り上げる実験

を行いました。

①食欲があるかどうかの確認 においては、マダイに3~4個のペレット飼料を与えることで検証しました。

30秒以内に食べる事を確認出来たら、即座に②に移行しました。

(仮に食べなかった場合に、単純に食べる意欲が無い状態なのか、実験において釣りの仕掛けを見切ってるのかを区別するためですね)。

22匹のマダイを実験群の11尾と対照群の11尾に分け、それぞれ異なる操作を行いました。

90㎝(3フィートくらい笑)の延べ竿の先端に釣り糸を結び、下端にオモリ(重さの記載はありませんでした。めちゃくちゃ気になる…)を接続しました。5㎝ほどのエダスを出し、こちらにはシングルフックを接続しました(いわゆるシンプルなライト胴付き仕掛けですね)。

針のカエシは潰してあります。

解凍したオキアミを約5~8mmにちぎり、釣り針に刺してセットしました。

この仕掛けを投入し、反応を観察しました。

なかなか食べない場合でも、60秒観察を継続しました。

実験区のマダイは、口の中にオキアミと釣り針が入った瞬間、水上に釣りあげました。これを「キャッチ」と定義しました。30秒空気中に晒した後、針を外して元の容器に戻しました。

針を外すのに難儀した場合はハリスを切りましたが、次の食欲チェックでは問題なく餌を食べることが確認できました。

釣り針とオキアミを60秒以上食べない場合、「ノーキャッチ」と定義しました。

釣り針に掛からないままオキアミだけを持ち去る場合があり、この場合は「バイト」と定義しました。この場合、別のオキアミを釣り針に付け、仕掛けを再度投入し、実験を継続しました。

対照区の魚は、ほぼ同じ仕掛けを投入しつつも、針先を大きく折り取り、針に掛からないままオキアミを食べ続ける事が出来るようにしました。

これらの実験は午前7:00~11:00の間に行いました。

実験を繰り返すにつれ、個体間で空腹度合いの差が生じるのを防ぐため、十分な量のペレット飼料を午後3時~6時に大量に与えました。

これらの行為を28日間連続で行いました。

実験は二回に分けて行い、一回目は実験群の6尾と対照群の5尾を扱い、二回目は、それぞれ1回目の実験と異なる個体の構成となるよう、実験群の5尾と対照群の6尾を扱いました。

また、それぞれの個体において、仕掛けの回避を学習したかどうかも確認しました。食欲チェックでペレット飼料を食べたのにも関わらず、仕掛けのオキアミを食べる事を避けた個体は「学習済み」と定義しました。

そして、学習するまでにかかった試行回数をカウントしました。

実験2:仕掛けを認知する能力

28日間の実験1が終わった後に、仕掛けの認識能力の検証も行いました。

①(オキアミをセットしていない)仕掛け(空針)の近くに配置したペレット

②仕掛けにセットしたオキアミ(実験1の実験区と同じ)

③仕掛けに接続していない単体のオキアミ

をそれぞれ容器に投入し、60秒間反応を観察しました。

実験3:釣られやすさの比較

実験2の終了1時間後、一度も仕掛けを見たことがない8尾を別途用意し、仕掛けを見慣れていたり、釣られたりした経験のある、28日の実験で扱った11尾と、釣られやすさに差異があるかを検証した。

ペレットによる食欲チェックの後に、実験1と同様の道具で実験を行いました。

そして、仕掛けに食いつくまでの時間(秒数)を計測しました。

この実験でも、食いつかない場合は60秒観察を継続しました。

実験4:記憶の保持

実験の約2ヶ月後(56~67日後)、実験2と同様のやり方で、学習したことを覚えているか確かめました。

結果

実験1:

全ての個体が食欲チェックでペレットを食べたにも関わらず、仕掛けについた餌はたびたび回避する行動を見せました

全ての個体が、1~2回の実験で仕掛けについた餌を回避する行動を見せ始めました。

しかし、回避を学習したのちに、最長でも13日以内には再度釣られてしまいました。

28日の間で釣りあげられた回数は、個体によって3回~8回とばらつきがありました。

実験2:

①仕掛け付近のペレット

は11/11(100%)の割合で食べ、

②仕掛けに付けたオキアミ

は1/11(9.1%)の割合でしか食べず、

③フリーで落とした単体のオキアミ

は11/11(100%)の割合で食べる

という結果になりました。

実験3:

一度仕掛けを見た事のある個体が釣りあげられてしまう確率は2/11(18.2%)、全く仕掛けを見たことのない個体が釣りあげられてしまう確率は9/11(81.8%)でした。

実験4:

仕掛け付近のペレットを食べる確率は100%であったにも関わらず、仕掛けについたオキアミを食べる確率は5/10(50%)でした。

考察

・実験1においては、わずか1~2回の実験で、全個体が仕掛けについた餌を避けることを学習しました。本研究では、マダイは毎日仕掛けを目にしたため、「釣られにくさ」を獲得していると考えられます(しかし、最長でも13日以内に釣られているので、必ずしも未来永劫釣られない訳ではないでしょう)。

・釣り針についたオキアミを突つき、針に掛からずに持ち去る行動は、学習の結果である可能性があります。

・実験2においては、オキアミ単体で与えた場合100%の確率で食べつつ、ラインが伴ったオキアミを避けたので、オキアミそのものを危険視している訳ではなく、仕掛けと危険性を紐づけて認識している可能性が高いです。

・実験3においては、一度も仕掛けを目にしていない個体は顕著に釣られやすく、危険性の学習が伴っていないためだと考えられる。

・実験4では、学習した回避行動をかなりの長期間保持できる事を示唆している。

…要約は以上です。

後編に続きます:

論文のリンク↓

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