クロダイのベイトの幅広さは、人智を超えている

生態・形態

東京湾流入河川某所。。。チヌ専用ワームでバスが釣れて、その後ほぼ同所でチヌが釣れたことがあります。

「パターン」と「マッチザベイト」の概念が完全に定着している今日
現在のルアーフィッシングにおいては、「◯◯◯パターン」といった具合で、魚が捕食している生物(◯◯◯)に似た形状やサイズ感、水押し等のルアーを使って、より良い釣果を目指す考え方が定着していますよね。

まあ、完全に定着している文化・考え方ですので、説明不要かと思います。「マッチザベイト」という考え方についても、同様ですよね。

クロダイに「パターン」はあるのか?
チニングがルアーフィッシングとして市民権を得て、ある程度の年数が経過したかと思います(それでも他の釣りモノに比べたら非常に歴史が浅いですが…)。各社からロケ動画が数え切れないほど投稿されており、パターンの概念に沿って説明がなされます。

しかし私は、そのたびにいつも同じ事を思っていました。

「ほんとにぃ?」

魚食性の魚の口の構造は2通り

クロダイは違いますが…

他の魚をメインに食べる肉食魚がいますよね。そういった魚は、他の魚を捕食しやすいように、進化の過程で口の構造が最適化されています。そして、その構造は大きく2つの系統に分けることが出来ます。

①鋭く長い歯を備え、大きく裂けた口を持つタイプ

タチウオやサワラ、カマスなんかが非常にわかりやすいですね。一撃で致命傷を与えたり、歯を獲物の体表深くに突き刺して、チュルリンと逃げられる事を防ぎ、確実に仕留めるタイプですね。この捕食方法においては、歯の鋭さが非常に重要なことは想像に難くありません。ラインを切ってしまう魚としても有名ですよね。

②口が前方に大きく伸び、獲物の周囲の水ごと飲み込むタイプ

スズキやハタが非常にわかりやすいですね(厳密に言えば、ハタは純粋な魚食性というより、無脊椎動物の捕食の割合も多いですが…)。口が大きく開き、かつ大きく前方に飛び出します。この口を瞬間的に展開し、獲物の周囲の水ごと囲ってしまう食べ方です。歯が大きすぎると吸い込みの妨げになるのでしょうか?鋭くはあるものの小さい歯が並んでいますよね。

例えば…シーバスフィッシングにおける「パターン」の存在は疑いようが無いような…

河口にいる魚の中でも、シーバスのベイトとしてメインになるようなサイズ感の魚について、今後新種が見つかる事はあるのでしょうか?

例として、「古くから知られていたハゼAが、実はハゼBとハゼCの二種類だった!」というような発見は、今後もあると思います。ニシン科の仲間(サッパやマイワシ、コノシロ等、シーバスのベイトとして代表的な種が多く含まれています)に比べて、ハゼ科はそういった事例が非常に多く、今後もそのような事が起きると考えられます。

しかし、私がここで言いたいのは、このような「そっくりさんの二種」に分岐する発見ではなく、「これは何の仲間なんだ…全く見当もつかない…」といった具合の、ある意味大衆のイメージ通りの新種です。

これが今後見つかる可能性については、ほぼほぼ無いと言えます。脊椎動物は無脊椎動物に比べて種数が圧倒的に限られており、少なくとも現代の日本のサイエンス水準においては、河口域に棲む10cm以上の小魚については、ほぼ全て網羅しているでしょう。万が一新種が見つかっても、見た瞬間に「◯◯の仲間だろう…」と直感できるくらいには、ある程度分類を絞り込める容姿をしているはずです。

「サヨリパターン」「エツパターン」など…現場に幾度も立っていれば、「この魚がシーバスに捕食されているだろうな…」といった具合で、パターンとして類推する事が出来ます。

しかし…

無脊椎動物のバリエーションはマジのマジでヤバい

脊椎動物に対し、無脊椎動物は比べ物にならないくらい大昔から存在していました。数億年のアドバンテージによって、より多くの種類に分岐し、豊かなバリエーションを保っています。その豊富さは、我々のような脊椎動物と比べれば、書いて字のごとく『桁違い』なのです。

カンブリア紀には既に、現存の水棲無脊椎動物のご先祖様はほぼ全て出揃っています。

河口域にエリアを絞ったとしてもそれは明確であり、仮に河口の泥をバケツ1杯分掬ってきて、水に溶いて観察すれば、「一体何の仲間なんだ…見当もつかない…」という生物に簡単に出会うことが出来るでしょう。

私は学生時代、「目の前のよくわからない無脊椎動物達を全て分類しなければ、寝ることも家に帰ることも許されない」という、やや特殊な環境に投じられる事がありました。

そんな生活を通して学んだ事があります。それは、

「我々が普通に生きている上で知る『カニ』『エビ』『ゴカイ』等の水棲無脊椎動物は、自然界に存在している水棲無脊椎動物のごく一部でしかない。」

ということです。

スジホシムシ

例えば、下の上ぐらいの…マイナー生物の中でもややメジャーどころの種として、『スジホシムシ』が良い例として挙げられると思います。

※とても気持ち悪いです。画像は貼りません。ユムシをご存知の方であれば、どことなく細長くて血色の悪いユムシを想像していただければ、八割方合ってると思います。

ご近所付き合いで、隣人に『スジホシムシ』の話題を突如持ち出しても、99%伝わらないと思います。

しかし、ある程度浜辺の生物に着目し続けていたりすると、居る場所にはかなり生息しており、かなりの濃さで生息している事がわかります。九州地方等、一部地方ではマダイやチヌの釣りエサとして、過去に使われていたこともあるようです(近年はなぜかかなり減っているらしい)。(https://biodiversity.pref.fukuoka.lg.jp/rdb/rdbs/detail/202401554)

この『レッドデータブック 福岡』というページで紹介されているのはスジホシムシ“モドキ”ですが、こんなん同じようなもんです(乱暴)

しかし、スジホシムシはそこそこのサイズがあり、砂に潜って暮らす生態ではありつつも無防備に転がっていることも多く、「人間が見つけやすい部類」の生物です。

食料源として魚を支えている生物達の多くは、用心深く隠れていたり、そもそもサイズが小さかったりして、我々の目に入ることはほとんどありません。

(特に感潮域の)無脊椎動物をメインに食べている魚のパターンを正確に類推する事は、非常に困難な事が予想出来ます。

ホシムシパターンとか、聞いたことないよ。

結局クロダイはどうなのか?

チニングを始めて何年経ってもなお、カラーのセレクティブさやルアーのセレクティブさに奥ゆかしさを感じることが多々あります。

しかしその反面、クロダイを釣れば釣るほど、思うことがあります…

「あんま◯◯パターンとかねぇ気がするな笑」

最初から思考停止で「無い」と決めつけていた訳ではなく、むしろパターンを探せば探すほど不思議な事が増え、思考が深まり、最終的に「仮にあったとしても、ルアーフィッシングで狙う上ではあまり必要の無い情報である」として割り切れる部分が大きいことに気付きました。

「無い」といいますか、私はクロダイに対して、「確実に捕まえられる予感を持てば、ターゲットの種族はどうでも良さげに近付いて来る」という、何となくのイメージを抱いています。

彼らの視点で「捕まえられそうな状況かどうか」が何倍も大事な気がします。人間のキャラクター観に当てはめれば「面倒くさがり屋さん」かつ「臆病」であり、確実に捕食できそうな時しかコタツから出てこないようなイメージです。

そもそもパターンを語るうえで、人類の無脊椎動物に対しての理解があまりにも追いついていないので、「チヌの◯◯パターン!!」と言ったところで信憑性に欠ける、という認識です。

※イナッコパターンだけは例外だと考えています。後述します。

シザーコーム3.8とか、なんだと思って食ってくるんでしょうね。『河口で捕れたよくわからん無脊椎動物感』はめちゃくちゃある。

番外編① イナッコパターンについて

静岡県に興津川という川があります。河口域ですが丸砂利がメインの底質で、フジツボや固着性の二枚貝類の生息数は少ない印象。

全体的に浅く、中洲が散在しています。水の透明度は、夏季でも付近の川に比べて高いです。

そんな川の河口に架かる橋の上から、チヌ達が猛烈にイナッコボールに襲いかかる様子を見たことがあります。中州が散在するためか、断面がくさび型になっている水ギワに追い込みやすいのでしょう。とにかく浅場へ浅場と雑に追い回し、取り残される個体を狙っていました。

しかし前述の通り、クロダイが仮にイナッコをメインの餌として見据えた進化をしていれば、タチウオのような口か、シーバスのような口のどちらかになっているはずです。全然違いますよね。

進化としては無脊椎動物を捕食する方向性を選んだ彼等ですが、河口の資源量が尋常ではないイナッコはおそらく「棚ぼた」ベイトであり、専門に狙ってきた分野ではないはずです。しかしチヌにイナッコパターンは確実に存在すると私は思いますし、そのシチュエーションに適したプラグもあるでしょう。完全な海水域で、マイワシやカタクチに着いていることもありますよね。

私は興津川でシンペンチニングに打ち込んでいた過去があり、色々なシンペンをこの河口で投げ込んでいました。当時出たての『アピア パンチライン カーヴィ70SS』なんかはお気に入りで、ドシャローの見えチヌの反応も良かったです。

今でこそもっと小さいパンチラインがありますが、もっと後に出ませんでしたっけ?記憶違いでしょうか…?

…とはいえ、仮にイナッコを追い回しているその場面で、現在チニングで実績があるワームを上手く通した時に、「マッチザベイトではない」ので無視される、とは到底思えません。その時は釣具を持っておらず、捕食ラッシュが落ち着いたあとに渋々撤退したのですが…

(ワームがフィッシュライクなシルエットであろうがなかろうが、あの個体に関してはイナッコを放り出してリグにすっ飛んで来るような予感がします笑)

番外編② 藻類について

龍岩さんのこのポストが、今回の記事を書くに至ったきっかけです。

画質とピントがちょっとナントモですが、チヌの生息環境等も加味した場合、この藻類はおそらくホソアヤギヌではないでしょうか?(違ったらごめんなさい)。何かしらの紅藻の仲間だとは思うのですが…

河口の藻類をゴソゴソとこそげ取って、透明な容器に入れてマジマジと観察すると解るのですが、藻類の細かい隙間に、とんでもない量の無脊椎動物が生息しています。ギリギリ肉眼で見えるようなサイズから、1円玉くらいあるやつまで、様々です。

藻類を食べているチヌについてはたまに話題になりますが、逆にチヌ側の立場になって考えた時に、口で藻類をこそげ取る上で、こうした生物を口に含まずに藻類だけを食べることは、物理的に絶対出来ないと思います(し、特に藻類の成長が活発な冬季は貴重なカロリー源ですから、する必要もありません)。そのくらい、河口の藻類の群集には無脊椎動物が潜んでいます。

昨年はブナの実の不作で熊が多かっようですが、おそらくクロダイが餌にしている生物も、不作/豊作のサイクルがあるでしょう。

「今年のコケはコツブムシ(ちっこいダンゴムシみたいなの)が多いな…美味え」みたいなものがあるのかもしれません。

チニングに飽きて、ヘッドライトを照らしながらゼロ距離で足元を覗き込んだりしていると、結構見つかります。

それこそ私はパターンだと思うのですが、こんなものを人類が理解できるのは、五十年後、百年後とかかもね。

まとめ

チニングにおける『パターン』の説明を見聞きした際に、(少なくとも私は)「なるほど」「そうだったのか」といった感想を抱いた経験はほぼ無いです。むしろ真逆の感想を抱いたことがほとんどです。非常に『パターン』を見出しにくい魚種だと私は感じています。

皆さんはどう思いますか?

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント